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転職で給料は上がるのか — 国の統計17年分で見ると、40代でも「上がる人の方が多い」時代になっていた

目次(10)
  1. 結論から書きます
  2. 測り方
  3. 上がる人は、4人に1人から5人に2人になった
  4. 40代でも、上がる人の方が多くなった
  5. 年ごとに並べると、青い範囲が上へ広がっていった
  6. 大きく上がる人が、大きく下がる人を追い越した
  7. 正社員に近い働き方どうしの転職では
  8. 言えないこと(正直に)
  9. 数え方(生ログ)
  10. 自分の結論を壊しにいく(3点)

「転職するなら35歳まで」。一度は聞いたことがあると思います。

給料の面では、本当なのでしょうか。

国は毎年、転職した人に「前の勤め先と比べて、給料はどうなったか」を聞いています。厚生労働省の「雇用動向調査」です。

その答えを、2009年から2025年まで17年分並べてみました。

結論から書きます

  1. 転職で給料が上がった人は、2009年の25.7%から、2025年は40.8%に増えました。 4人に1人から、5人に2人です。下がった人は34.5%から31.0%

  2. 2023〜2025年は、40代後半まで、どの年齢も3年続けて「上がった人の方が多い」年でした。 2009〜2011年は、35〜39歳と45〜49歳は3年続けて「下がった人の方が多い」年でした。「35歳を過ぎたら給料は下がる」は、十数年前の統計ではおおむねその通りだったことになります

  3. 給料が1割以上上がった人と、1割以上下がった人の数が、入れ替わりました。 2009年は1割以上上がった人 15.1%・1割以上下がった人 25.5%。2025年は 28.2% と 21.9%

  4. それでも、2025年に転職した人の31.0%は、給料が下がっています。 50〜54歳は年によって向きが変わり、55歳からは今も下がった人の方が多い

測り方

  • 使った資料: 厚生労働省「雇用動向調査」の年間の結果(2010〜2025年の各年の「結果の概況」)。2009年の値は、2010年の報告書の「前年」の欄から取りました

  • 聞いている相手: その年に転職した人本人。「前の勤め先と比べて、給料は増えたか・変わらないか・減ったか(1割以上か未満か)」への答えです

  • 調べている範囲: 常用労働者が5人以上の事業所(16の産業)。2025年は入職した人 57,896人分の回答を集計しています(新卒などを含む入職した人全体の数です)

  • 年齢ごとの値は年による揺れが大きいので、年齢の比べ方は、最初の3年(2009〜2011年)と最後の3年(2023〜2025年)の1年ずつの値を並べ、3年とも同じ向きの年齢だけを言い切りに使いました

  • 2017年の値は、翌年の報告書で少し数え直されていたので(最大0.6ポイント)、新しい方の値を使っています

  • 費用は ¥0。報告書はすべて厚生労働省のサイトで公開されています

上がる人は、4人に1人から5人に2人になった

「転職で給料は上がるのか — 国の統計17年分で見ると、40代でも「上がる人の方が多い」時代になっていた」の図

2009年は、転職して給料が上がった人(25.7%)より、下がった人(34.5%)の方が多い年でした。

それが2025年には、上がった人 40.8%・下がった人 31.0% になっています。

ずっと右肩上がりだったわけではありません。2019〜2021年は、いったん下がった人の方が多い年が続きました。上がった人がはっきり多くなったのは、2023年からです。

40代でも、上がる人の方が多くなった

「転職で給料は上がるのか — 国の統計17年分で見ると、40代でも「上がる人の方が多い」時代になっていた」の図

年齢ごとに「上がった人の割合 − 下がった人の割合」を出しました。プラスなら、上がった人の方が多い年齢です。1年ずつの値は揺れるので、最初の3年と最後の3年を1年ずつ並べます。

  • 35〜39歳 — 2009・2010・2011年 −6.0 / −4.9 / −1.6 / 2023・2024・2025年 +8.1 / +21.2 / +19.6

  • 40〜44歳 — 2009・2010・2011年 −10.9 / +3.2 / +0.1 / 2023・2024・2025年 +12.0 / +16.9 / +17.5

  • 45〜49歳 — 2009・2010・2011年 −8.5 / −8.5 / −5.4 / 2023・2024・2025年 +6.9 / +22.6 / +11.0

  • 50〜54歳 — 2009・2010・2011年 −19.3 / −13.9 / −12.3 / 2023・2024・2025年 +0.6 / +10.8 / −12.6

(ポイント)

2009〜2011年は、35〜39歳と45〜49歳が3年続けてマイナスでした。「35歳を過ぎたら給料は下がる」という言い方は、おおむね当たっていたわけです(40〜44歳は年によってプラスの年もありました)。

2023〜2025年は、35〜49歳のどの年齢も3年続けてプラスです。

50〜54歳は、2023年と2024年はプラス、2025年はマイナス。年によって向きが変わる、ちょうど境目の年齢です。

60〜64歳は、今も大きくマイナスです(2023〜2025年の平均で −44.2)。2025年の報告書では、この年齢の男性が前の勤め先を辞めた理由の57.8%が「定年・契約期間の満了」でした。定年のあとに働き方を変える人が多い年齢です。

年ごとに並べると、青い範囲が上へ広がっていった

「転職で給料は上がるのか — 国の統計17年分で見ると、40代でも「上がる人の方が多い」時代になっていた」の図

年ごと・年齢ごとの値を、全部並べました。青いマスは上がった人の方が多い所、赤いマスは下がった人の方が多い所です。

1年ごとのマスは揺れが大きいので、1つのマスだけでは判断できません。それでも、青い範囲が年を追って右(上の年齢)へ広がっていくのが見えます。

大きく上がる人が、大きく下がる人を追い越した

「転職で給料は上がるのか — 国の統計17年分で見ると、40代でも「上がる人の方が多い」時代になっていた」の図

給料が「1割以上」変わった人だけを見ると、入れ替わりがはっきりします。

  • 2009年: 1割以上上がった 15.1% / 1割以上下がった 25.5%

  • 2025年: 1割以上上がった 28.2% / 1割以上下がった 21.9%

転職で「大きく下がる」より「大きく上がる」ことの方が多くなったのは、この十数年の変化です。

正社員に近い働き方どうしの転職では

2025年の報告書には、前の仕事と今の仕事の働き方が同じ人だけの数もあります。

  • フルタイムで、期間の定めのない雇用から、期間の定めのない雇用へ: 上がった 44.5% / 下がった 29.0%

  • 期間の定めのある雇用どうし(フルタイムとパートを含む): 上がった 34.9% / 下がった 27.9%

  • パートタイムどうし: 上がった 39.0% / 下がった 21.8%

フルタイムで期間の定めのない雇用どうしの転職では、上がった人が下がった人を15.5ポイント上回っていました。

言えないこと(正直に)

1. 同じ人を追いかけた数ではありません。 毎年、その年に転職した人に聞いた答えです。「あなたが転職したら上がる」確率ではありません。

2. 答えは本人の申告です。 何の給料(月給か、年収か)で比べたのかは、公表されている資料には書かれていません。

3. 転職したから上がったのか、世の中の給料が上がったのかは分けられません。 世の中全体の給料が上がる年は、転職した人の給料も上がりやすいはずです。この統計だけでは、その2つを分けられません。

4. 調べている範囲に限りがあります。 常用労働者5人以上の事業所・16の産業が対象です。2018年以前は、一部の業種(バーやナイトクラブなど)が対象の外でした。

5. 年齢ごとの1年の値は揺れます。 そのため、3年とも同じ向きの年齢だけを言い切りに使いました。

6. 途中で数え方が変わっています。 2011年以前の値は、国の別の統計の不適切な処理に伴う再集計をしていない値で、国は「利用にあたっては注意を要する」としています。この記事の2012〜2018年の値も、各年の報告書に最初に載った値(再集計の前)です。調査のやり方も2013年に変わり(調査員が配って回収する形から、郵送と民間事業者へ)、2023年からは小さな事業所(5〜29人)の選び方が変わりました。17年を1本の線として見るときは、この切れ目をまたいでいます。

7. 聞いている相手に限りがあります。 前の勤め先で雇われていて、調査のときまで新しい勤め先に残っている人の答えです。自営業から来た人は入っていません。また、正社員からパートのように働き方が変わる転職も混ざっています。

数え方(生ログ)

資料   厚生労働省「雇用動向調査」
       年間の結果の概況
       2010〜2025年(16冊)
表     転職入職者の賃金変動状況
       別割合(年齢階級別)
年     2009〜2025年(17年分)
       2009年は2010年の報告書の
       前年の欄から
2017年 翌年の報告書の値(数え直し)
年齢   1年ずつの値を並べ、3年とも
       同じ向きの年齢だけ言い切る

表紙の絵は生成した画像です。数字と文字は絵に描かせず、上に重ねています。

自分の結論を壊しにいく(3点)

1. 景気が良くなっただけでは。

その可能性はあります。2009年はリーマン・ショックの翌年でした。「転職の仕組みが変わった」のか「世の中の給料が上がった」のかは、この統計だけでは分けられません。言えるのは、転職した人の答えがこう変わった、ということまでです。

2. 年齢ごとの値は、たまたまでは。

1年ごとの値は揺れます。2025年だけを見ると50〜54歳は −12.6 ですが、2024年は +10.8 でした。最初は3年の平均で「上がる人の方が多い年齢の上限」を出そうとしましたが、別の目で確かめてもらうと、その境目は1年の値に引っぱられて動くと分かりました。そこで、3年とも同じ向きの年齢だけを言い切りに使っています。

3. 「上がった」は本人の感覚では。

本人の答えなので、その通りです。ただ、同じ形の表が17年分公表されている統計なので、年ごとの比べ方には使えると考えています。聞き方が途中で変わったかどうかは、調査票が公開されていないので確かめられませんでした。